
「菱の実(ヒシの実)の効能」で検索される方が多いのですが、菱の実は食品であり、特定の効果や効能をうたうことはできません。この記事では、菱の実にどんな成分が含まれ、どんな研究が行われているのかを、出典を示しながら整理します。
菱の実の成分は「実」と「外皮」で違う
菱の実は、かたい殻(外皮)の中に白い実が入っています。この二つは含まれる成分がまったく違います。
- 中の実:主成分はでんぷん。茹でると栗や里芋のようなほくほくとした食感になります。昔から食用にされてきた部分です。
- 外皮(殻):ポリフェノールが多く含まれる部分です。食べる部分ではありませんが、お茶の原料として使われます。
猪苗代湖産ひし茶が殻ごと焙煎してつくられているのは、このためです。

外皮に含まれるポリフェノール「トラパイン」
西九州大学健康栄養学部の安田みどり教授らの研究によって、菱の外皮からは複数のポリフェノールが分離されています。報告されているのは オイゲニイン、1,2,3,6-tetra-O-galloyl-D-glucopyranose(TGG)、そして トラパイン です。
このうちトラパインは、菱の外皮にしか含まれていない珍しい成分とされています。「トラパイン(trapain)」という名前は、菱の学名 Trapa に由来します。
研究でわかっていること
菱については、まだ研究の数そのものが多くありません。そのなかで報告されているものを挙げます。
- 抗酸化活性:菱のポリフェノールは、緑茶カテキンの一種であるEGCG(エピガロカテキンガレート)と比べて高い抗酸化活性を示したと報告されています。
- ヒトを対象とした試験:「ヒシ外皮熱水抽出液に含まれるポリフェノールの特性とヒト食後血糖値上昇抑制作用」(安田みどりほか、日本食品保蔵科学会誌 44巻4号、2018年)という論文が発表されています。ヒシ外皮の熱水抽出液を摂取した群で、食後20分・30分の血糖値上昇が抑えられたと報告されています。
- 加熱との関係:同じ論文のなかで、トラパインは80℃以上で不安定になることも報告されています。
▼「第4回 全国ヒシサミット in 猪苗代湖」では、ヒシの栄養成分や機能性についての研究発表も行われました(弊社公式Instagramより)
菱の実は昔から食べられてきた食材
菱は、日本や中国で古くから食べられてきた水草です。中国では三千年以上前から食用にされ、日本でも救荒食や薬膳の食材として扱われてきました。佐賀県神埼市のように、在来種の菱(ワビシ)の産地として知られる地域もあります。かつては菱のゆで汁を健康のために飲んでいたという記録も残っています。
とがった角のある形は、忍者の武器「撒菱(まきびし)」の語源になったと言われています。
▼ 猪苗代高校の探究学習。地元の高校生と一緒に猪苗代湖で菱の実を収穫しました(弊社公式Instagramより)
ノンカフェインで、時間を選ばず飲める
ひし茶は茶葉ではなく菱の実からつくるお茶のため、カフェインを含みません。朝でも夜でも、時間を気にせず飲めます。お湯出しでも水出しでもお作りいただけます。
猪苗代湖産の菱の実について
いなびしでは、福島県・猪苗代湖で収穫した菱の実を使っています。放射性物質・重金属・残留農薬の検査を毎年実施しており、結果はいずれも「検出されていません」。
猪苗代湖では毎年夏に菱が大量に繁茂し、秋に枯れて沈むことが水質悪化の一因になっています。その菱を収穫して食品にすることで、湖の環境保全につなげています。
▼ 菱の実の収穫は、早朝から猪苗代湖に入って一つずつ手作業で行います(弊社公式Instagramより)
よくある質問
Q. 菱の実に副作用はありますか?
A. 一般的な食品です。ただし、生のままでは食べられませんので、必ず加熱してください。体質に合わないと感じた場合は使用を中止してください。
Q. カフェインは入っていますか?
A. ひし茶はノンカフェインです。
Q. 実と殻、どちらに成分が多いのですか?
A. ポリフェノールは外皮(殻)に多く含まれます。中の実はでんぷんが主成分です。
Q. 妊娠中でも飲めますか?
A. 食品ですが、心配な場合はかかりつけの医師にご相談ください。
関連ページ
出典
- 安田みどり・安武健一郎・大曲希実・斎木まど香・児島百合子「ヒシ外皮熱水抽出液に含まれるポリフェノールの特性とヒト食後血糖値上昇抑制作用」日本食品保蔵科学会誌 44(4), 179-187, 2018年
- 産学官連携ジャーナル 2020年6月号「忍者も使ったユニークな食材『菱』」(科学技術振興機構)
- ぐるっと会津「新しい猪苗代湖のお土産『猪苗代湖産ひし茶いなびし』について、専門家に聞いてみました。」

